「役に立つもの」ばかり作っていた
普段作るツールは、何かの作業を助けるためのものです。原稿校正、告知画像制作、TRPG記録管理……どれも「この問題を解決したい」という出発点があります。それ自体は良いことですが、「ただ気持ちいいから作りたい」という動機でものを作る機会があまりありませんでした。
あるとき枯山水の庭の写真を見て、砂の上の波紋がとても好きだと思いました。あの線は、誰かに見せるために描かれているわけでも、何かを記録するためでもない。描くこと自体に意味がある。その感覚を、指で触れるアプリとして再現できないかと思ったのが出発点です。
「残らない」ことをわざと選んだ
ZENfingerは、描いた線を保存できません。共有もできません。リセットすると消えて、また白紙に戻ります。これは意図的な設計です。「残さなくていい」と決めた瞬間に、気軽に触れるものに変わります。うまく描けなくても問題ない、すぐ消してやり直せばいい、という気持ちで触れてもらえます。
現代のアプリのほとんどは何かを保存・共有することを前提にしています。ZENfingerはその逆で、「触れた瞬間だけのために存在する」ものを目指しました。
少しの時間に、ただ触れてほしい
会議の前後や、ちょっとした待ち時間に開いて、指を2〜3回なぞって閉じる——そういう使い方を想定しています。スマートフォンで指を使うと、より砂を撫でているような感触があります。力を入れず、ゆっくりと指を動かしてみてください。